医療に関する指針

医師の診療指針

厚生中央病院の医師は、患者さんの人格を尊重し、個人の秘密を守り、患者さんの健康と安全を優先し、患者さんの権利を損なうことなく診療を行わなければならない。
また、厚生中央病院の医師は、臨床研修指定病院として、現時点で考えられる最良の医療を提供するために、次のことを遵守して診療を行わなければならない。

説明と同意

いかなる診療行為に対しても、分かりやすい言葉で、理解できるまで説明し、同意を得てから診療を行わなければならない。同意を得るに当って、当診療行為が必要な理由、具体的な内容、予想される身体障害と合併症、行われない時に予想される結果と対応、その他を説明しなければならない。また、「説明と同意」については記録として残さなければならない。

チーム医療

病院で行われる医療はすべてチームとして行われなければならない。医師はチームのリーダーとして、他の関連スタッフの意見を尊重し、協力して質の高い安全な医療を提供しなければならない。

病棟、外来を問わず、患者や職員に対して、責任医師(主治医)を明確に示し、担当医を含めたチームで診療を行うことが必要である。一人しか所属医師がいない診療科に関しては、他科の医師との連携でこれを補う。初期臨床研修医も積極的に診療に関与させるよう配慮するが、主治医とはなれない。また、非常勤医師の担当患者に関しては、当院の常勤医師が主治医となり、非常勤医師との密接な連携により診療を行う。

当該診療科において、医師は他の関連スタッフの参加のもと、定期的に症例検討会等を開き、一人の患者さんをチームとして診療しなければならない。

医師の任務

  • 診療科責任医師(部長等)は、少なくとも週1回の管理者回診を行い、当該科の入院患者について、個々の医師の診療状況を把握し、必要時には助言と指導を行わなければならない。
  • 主治医とは、患者さんの診療に主たる責任を有する医師であり、当該科における診療能力があることを条件に、診療科責任医師(部長等)が認定する。また診療科責任医師(部長等)も主治医を兼任できる。
    主治医が不在になる時には、主治医の責任において、他の医師に代理を頼み、診療に関する情報を伝えなければならない。
    主治医は担当患者を毎日診察し、患者さんの訴えに耳を傾け、それに誠実に答えなければならない。また、診察後速やかに必要事項を診療録に記載しなければならない。
  • 担当医とは、主治医の指示と指導の下で、主治医の診察を補佐する医師であり、初期臨床研修医が担当医として診療に参加する場合は、常に臨床研修指導医や主治医の指導の下で診療を行わなければならない。また、研修医の診療に対し指導医は常にそれを評価しなければならない。
  • 医師は、常に連絡先や必要事項を当該病棟等に知らせなければならない。
  • 医師は、自分の専門外の医学的判断が必要な時には、適切な他の診療科医師に相談しなければならない。

安全な医療

  • 医師は、常に最新の医学情報を入手し、診療に役立てるよう努力しなければならない。独りよがりの診療や検査、治療とならないよう、疾病に対する診療ガイドラインをはじめとした最新の医学的知識に基づいた判断をしなければならない。特に侵襲の高い検査や治療の適応判断は慎重に行い、診療科チームで診療しなければならない。
  • 医師は、医療を安全に遂行するために「医療安全マニュアル」を遵守し、最大限の注意を払って診療を行わなければならない。
  • 医師は、医療事故が発生した時は、速やかに当該科責任医師(部長等)に報告し、当該科責任医師は速やかに医療安全管理室に報告する。緊急重大事には直接副院長に報告しなければならない。

診療成績の公表

診療科責任医師(部長等)は、当該診療科の主要疾患についてのデータベース(診療成績、疾病頻度、その他)を作成し、今後の診療内容の向上に役立てなければならない。また必要とされるデータは公表されることとする。

医療安全管理指針

本指針は、総合病院厚生中央病院における医療安全管理体制の確立、医療安全管理のための具体的方策及び医療事故発生時の対応方法等について、指針を示すことにより、適切な医療安全管理を推進し、安全な医療の提供に資することを目的とする。

医療安全管理に関する基本的考え方

医療安全は、医療の質に関わる重要な課題である。また、安全な医療の提供は医療の基本となるものであり、各部門及び職員個人が、医療安全の必要性・重要性を部門及び自分自身の課題と認識し、医療安全管理体制の確立を図り安全な医療の遂行を徹底することがもっとも重要である。このため、医療安全感染管理委員会及び医療安全管理室を設置して医療安全管理体制を確立するとともに、医療内容の向上及び医療安全対策等に関する規程を作成する。また、できごとレポート及び医療事故の評価分析により規程等の定期的な見直し等を行い、医療安全管理の強化充実を図る必要がある。

医療安全管理に係る体制確保のための組織等

本院の安全管理体制の確保及び推進のため、次に掲げる組織、人員等を配置し、別途規程等に定める。

  • 医療安全感染管理委員会
  • 医療安全管理室
  • リスクマネージャー
  • 医療機器安全管理責任者
  • 医薬品安全管理責任者

医療安全マニュアルの策定・周知

医療安全マニュアルを策定し職員へ周知するとともに、安全管理に関する組織的な研修を計画的に実施する。

医療事故発生時の対応

医療事故が発生した場合には、患者に対しては医療上最善の処置を行うとともに、状況の悪化に直ちに対応できる体制を整備する。また、患者・家族等に対しては、誠実に速やかな事実の説明を行う。重大な医療過誤が発生した場合は、現場当事者のみならず病院全体が組織として対応する。

医療事故等の報告及び改善策の立案

医療に係る安全管理の確保のために、患者に実害のない事例も含めて広く医療事故報告を収集し、調査・分析に基づく改善策の策定及びその実施状況の評価を行なう。医療安全管理委員会に報告すべき事例の範囲は患者影響度分類3b以上とし、医療安全管理者から報告する。

当該指針の閲覧

本指針については、院内掲示や総合病院厚生中央病院のホームページに掲載するものとする。

患者相談に関する基本方針

患者やその家族からの苦情及び相談については、相談窓口を設置し、医療内容に関するもの、入退院・医療福祉に関するもの、及びその他の苦情・相談に関するものについて、それぞれ体制を整備し適切に対応する。

その他

医療安全の推進のため、医療安全マニュアル及び改善策の見直しを継続して行い、改正内容については、職員への周知徹底を速やかに行なう。他の医療機関等の安全対策や医療事故等の有用な情報収集を行うとともに、医療安全対策の推進を図る機関への報告を行う。高難度新規医療技術を用いた医療を提供する場合、関係学会の基本的考え方やガイドライン等を参考に実施する。

附則

この指針は、令和元年6月1日から施行する。

院内感染対策のための指針

厚生中央病院における院内感染の予防など病院感染対策の基本方針を定め、患者及び全職員、訪問者を医療関連感染から防御し、安全で質の高い医療を提供することを目的に本指針を定める。

院内感染対策に関する基本的な考え方

当院は、急性期医療の病院として、初期医療から高度先進医療まで提供できるよう、先進設備を整え、各種学会認定の医師の臨床研修施設となっているほか、目黒区医師会をはじめ近隣医師会と病診連携を深め、地域の中核病院としての役割を担っていることから、安全で質の高い温かな医療を提供していくことが、責務だと考えている。

現在、感染症を取り巻く状況は予想していなかったタイプの新たな感染症の発生、すでに制圧されていたはずの感染症の再興、そして治療が可能なはずの感染症の多剤耐性化など厳しい状況がある。そのため、効果的な感染管理組織を整備し、医療関連感染の防止と、対策の充実、感染管理の質向上を目指し、院内感染防止対策を全従業者が把握し、この指針に則った医療を患者に提供できるように取り組む。

院内感染対策のための委員会、組織に関する基本的事項

医療安全感染管理委員会(infection control committee ; ICC)

院長を始め診療部、看護部等各部署の責任者で構成される同委員会において、院内感染対策の病院全体に関わる方針を決定する。また、医療安全管理室を設置し、感染管理者を配備し、業務を推進する。

感染対策委員会(infection control team ; ICT)

院長を始め診療部、看護部等各部署の責任者で構成される同委員会において、院内感染対策の病院全体に関わる方針を決定する。また、医療安全管理室を設置し、感染管理者を配備し、業務を推進する。

抗菌薬適正使用支援チーム(antimicrobial stewardship team ; AST)

ICCの方針に基づき、抗菌薬の適正使用を具体的に実践する。医師、看護師、検査技師、薬剤師、事務職員で構成される。

看護部リンクナース会

ICC、ICTの方針に基づき、各部署で具体的且つ実践的な感染対策を実施する。

院内感染対策のための従業者に対する研修に関する基本方針

院内感染対策のための基本的考え方及び具体的方策について、個々の従業者の院内感染に対する意識を高め、業務を遂行する上での技能やチームの一員としての意識の向上等を図ることを目的として、年2回程度定期的に開催するほか必要に応じて行う。

感染症の発生状況の報告に関する基本方針

法令に定められた感染症の届出及び院内の菌分離状況のサーベイランスを行い、必要に応じて院長への報告、ICTでの検討及び現場へのフィードバックを行う。

院内感染発生時の対応に関する基本方針

感染症患者が発生した場合は、医師または看護師から所定の様式をもってICC、ICTに速やかに報告する。また、緊急を要する感染症の発生時は、直ちに病院管理者へ報告し、対応を協議する。

患者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針

感染対策の理解と協力を得るため、病院ホームページに掲載し、閲覧の推進に努める。

その他の院内感染対策の推進のために必要な基本方針

院内感染対策の推進のため、CDCガイドラインや科学的根拠の強い臨床研究に基づいた、実践可能な「院内感染防止対策マニュアル」を作成し、病院従業者への周知徹底を図るとともに、このマニュアルの定期的な見直し・改訂を行う。

附則

この指針は、令和5年6月1日から施行する。


適切な意思決定支援に関する指針

1 基本方針

厚生中央病院は、厚生労働省が示す「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、すべての患者・家族等に適切な意思決定支援を行い、患者にとって最適な医療・ケアを提供することに努める。

2 人生の最終段階の定義

いずれ死が訪れることが予測される状態について、以下の条件を満たす場合を人生の最終段階とする。

  1. 複数の医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないという判断が一致した場合
  2. 患者が意識および判断能力を失った場合を除き、患者本人、家族等、医療・ケアチームの関係者が、医療的な終末期であることに納得した場合
  3. 患者、家族等、医療・ケアチームの関係者が、患者の死を予測し、対応の検討を開始した場合

3 人生の最終段階における医療・ケアの在り方 

基本原則

  1. 医師等の医療従事者により適切な情報の提供と説明がなされ、これに基づいて患者・家族等と医療・ケアチームが十分な話し合いを行い、患者の意思決定を基本として医療・ケアを進めること。
  2. 患者が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、患者が自らの意思を推定する者を、代理決定者として選任できるように支援を行うこと。
  3. 患者の意思は変化しうるものであることを踏まえ、何度でも意思の変更が可能であることを伝え、自らの意思を医師等の医療従事者に伝えられるように支援を行うこと。
  4. 医療・ケアチームにより、可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、患者・家族等の精神的・社会的援助を含めた総合的な医療・ケアを提供すること。
  5. 医療・ケア行為の開始・不開始、医療・ケア内容の変更、医療・ケア行為の中止等は、医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性をもとに慎重に判断すること。
  6. 生命を短縮させる意図を持つ積極的安楽死は行わない。
  7. 基本原則を順守し話し合った内容は、過去の話し合いから変更したことや、変更理由等、患者の意思決定のプロセスも含めて、繰り返し話し合い、第三者が理解できるようにカルテに記載すること。


4 人生の最終段階における医療・ケアの方針の決定手続き

患者本人の意思の確認ができる場合

  1. 患者の状態に応じた専門的な医学的検討のもと、医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明を行う。そのうえで、患者と医療・ケアチームとの合意形成に向けた十分な話し合いを行い、患者本人による意思決定を基本とし、医療・ケアチームの方針を決定する。
  2. 患者の意思は、時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて変化しうるものであることから、医療・ケアチームにより、適切な情報の提供と説明がなされ、患者が自らの意思をその都度示し伝えることができるような支援を行う。また患者が、自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、 その時の対応について、家族等も含めて話し合いを行う。
  3. このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度カルテに記載する。

患者本人の意思の確認ができない場合

次のような手順により、医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う必要がある。

  1. 家族等が患者本人の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、患者本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。
  2. 家族等が患者本人の意思を推定できない場合には、患者にとって何が最善であるかについて、家族等と医療・ケアチームが十分に話し合い、方針を決定する。時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、このプロセスを繰り返し行う。
  3. 家族等がいない場合、および家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合には、患者本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。
  4. このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度カルテに記載する。

認知症などで自らが意思決定することが困難な患者の意思決定支援

障がいや認知症などで、患者が自ら意思決定をすることが困難な場合は、厚生労働省のガイドラインを
参考に、家族、および関係者、医療・ケアチームが関与しながら、できる限り患者本人の意見を尊重した
意思決定を支援する。

身寄りがない患者の意思決定支援

身寄りがない患者における、医療・ケアの方針決定における過程は、患者の判断能力の程度、医療や
介護に関する費用等の資力の有無、信頼できる関係者の有無等により異なるため、患者本人の意思を
尊重しながら、介護・福祉サービスや、行政の関り等を利用し、厚生労働省のガイドラインを参考にして、
患者の意思決定を支援する。

複数の専門家からなる話し合いの場の設置

  • 患者の心身の状態等により、医療・ケアチームの中で、医療・ケアの内容の決定が困難な場合
  • 患者本人と医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容についての合意が得られない場合
  • 家族の中で意見がまとまらない場合や、医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容についての合意が得られない場合

 ※上記に該当した場合は、方針等についての検討、および助言を行う医療・ケアチーム以外の者を

  加えて、方針について話し合いを行う。  

附則

この指針は、令和7年6月1日から施行する。

参考文書

  • 医師の職業倫理指針(第3版) 平成28年10月 日本医師会
  • 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン 平成30年3月改訂 厚生労働省
  • 終末期医療に関するガイドライン ~より良い終末期を迎えるために~ 平成28年11月 公益社団法人 全日本病院協会
  • 終末期医療に関するガイドラインについて 平成20年2月 日本医師会 第ⅹ次生命倫理懇談会
  • 終末期医療のあり方検討専門委員会報告書 平成27年度広島県地域保健対策協議会終末期医療のあり方検討専門委員会
  • がん等における緩和ケアのさらなる推進に関する検討会における議論の整理 平成28年12月 がん等における緩和ケアのさらなる推進に関する検討会
  • 終末期医療のあり方について ー亜急性型の終末期についてー 平成20年2月 日本学術会議 臨床医学委員会終末期医療文科会
  • 救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン ~3学会からの提言~ 平成26年11月 一般社団法人 日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本循環器学会
  • 認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定ガイドライン 厚生労働省
  • 身寄りがない人の入院及び医療にかかわる意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン 厚生労働省