骨や歯の正常な形成に働くアルカリホスファターゼ(Alkaline Phosphatase:ALP)と呼ばれる酵素が遺伝的原因により働きがわるくなり、骨や歯が弱くなる病気です。
このため、骨折や関節痛、疲れやすい、齲歯を主な症状とします。肝臓などに損傷があった場合血清中のALP濃度は上昇するため、臨床検査ではALPは主として肝機能の指標の一つとして扱われます。一方、本疾患では逆にALPは低値となります。
近年、疾患概念が進むにつれ診断例が増えてきています。8つの病型に別れ、重症例は15万人に1人程度と非常に稀な疾患ですが、遺伝子の保因者は本邦で600人に一人います。成人型や歯に症状が限定する軽症のかたもいます。小児では、成長期のためにもともとALPは高く低値が見逃されていることもあります。骨折時は本疾患患者でも正常値を示していることもあります。
軽い外傷で骨折され、ALPの低値を指摘された方はご受診ください。成人型では下記のような方が対象となります。当院では、遺伝子検査(保険診療)を含め酵素補充療法も行っています。
周産期重症型は生まれつき、骨の石灰化がわるく、頭蓋骨もレントゲンでは膜様で、肋骨も細く、肺の低形成を伴い呼吸障害が著明で医療介入がなかれば、致死的となります。小児型では4歳以前の乳歯の脱落などで近年多く見つかってきています。
| 病型 | 発症時期 | 症状・予後 |
| 周産期重症型 (Perinatal lethal) |
胎児期〜新生児期 | 重度の骨石灰化障害、膜様頭蓋、呼吸障害、ビタミン B6 依存性けいれん治療が行われなければ早期に死亡 |
| 周産期良性型 (Benign prenatal) |
胎児期〜新生児期 | 長管骨の彎曲、生命予後は良好 |
| 乳児型 (Infantile) |
生後 6 ヶ月まで | 発育障害、くる病様骨変化、高カルシウム血症/高カルシウム尿症、頭蓋骨縫合早期癒合症治療が行われなければ、約 50%は呼吸器合併症のため早期に死亡 |
| 小児型 (Childhood) |
生後 6 ヶ月〜18 歳未満 | 乳歯早期脱落、くる病様骨変化、歩容異常生命予後良好 |
| 成人型 (Adult) |
18 歳以降 |
骨折、偽骨折、骨軟化症、骨密度低下、筋力低下、筋肉痛、関節痛、頭痛、歯科症状、偽痛風、生命予後良好 |
| 歯限局型 (Odonto) |
年齢は問わない |
乳歯早期脱落、歯周疾患など、症状は歯のみにとどまる、生命予後は良好 |
1.ALP (アルカリホスファターゼ)の低値(男性:33U/L以下、女性:29U/L以下)
2.骨折の既往歴や、自覚的に倦怠感が著明な方、原因不明の関節痛・筋肉痛の方
3.ご本人が無症状でも、ご家族に、次のような症状を認める場合
①乳歯の早期脱落(1-4歳で抜けてしまった)
②低身長
③歩行障害
④骨折しやすい
ALPの酵素製剤が開発され、自己注射にて治療が可能となりました。注射にて骨密度が上昇し、痛みがなくなることが期待できます。週1回から週3回で投与されていることが多いですが、副反応の強さにより減量することがあります。5年間の投与による副作用の報告はありませんが、5年以上の場合には慎重に継続を判断することとなります。
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